第27回マンション管理組合実践セミナー開催報告


開催日時:平成17年11月20日(日)13:25〜16:30
開催場所:さいたま市文化センター3階大集会室

主 催 : NPO 埼管ネット
(埼玉県マンション管理組合ネットワーク)
後 援 : 埼  玉  県
埼玉県マンション居住支援ネットワーク
さ い た ま 市
マンション問題総合研究所
協 賛 : 関西ペイント販売株式会社

昨年11月20日に行われた第27回マンション管理組合実践セミナーの要約を報告いたします。

開会挨拶                     
                                      NPO 埼管ネット会長 佐々木 一



テーマ1:「マンションのグレードアップ、バリューアップのポイント」について

                コーディネーター:マンション問題総合研究所 常務理事 青山 和憲 氏

 今日、社会の関心事に「環境に優しい」「省エネ」「安全」三つのテーマがあると思います。
大規模修繕工事においてもこれら三つのテーマを取り入れて行くことは必要になって参りました。
今回のセミナーはこのことをふまえ各メーカーより以下のテーマについて解説をしていただきます。

1「環境に優しい」をテーマに「環境対応形洗浄修復剤」
大規模修繕工事は生活をしながら行う工事ですから工事に使用する材料も臭いや刺激のない優しい材料を使うことが求められています。

2「省エネ」をテーマに「遮熱効果の期待できるシート防水工法」
今年の夏は多くのオフィスでクールビズが行われました。建物内の冷房温度を上げることにより省エネ効果を期待している訳です。屋上の防水材に遮熱性能を持たせることにより省エネ効果を期待します。

3「安全」をテーマに「既存建物へのオートロックシステムの導入」
近年、ピッキング、サムターン回し等マンションの空き巣被害の増大により既存建物への  オートロックシステムの設置の要望は増えてきました。しかしエントランスの操作盤と既存のインターホンシステムへの接続の点、新設の場合の費用の点などで問題があり導入をあきらめている例がありました。今回は電話を利用して比較的簡単にインターホンシステムを構築できるシステムです。

「環境対応形洗浄修復剤(アレスリフレシリーズ)について」

                    関西ペイント販売株式会社 東京建設塗料販売部 藤本 俊彦 氏

関西ペイント(株)は、マンション大規模修繕工事において外壁仕上材、鉄部用塗料を供給して管理組合の方々にご愛好賜って来ております。今回ご紹介させて頂きます商品は、従来塗料製造メーカーの枠を越えた洗浄剤を当社にて開発致しましたのでご披露させて頂きます。
当社が何故ゆえにこのような洗浄剤を開発するに至ったかは、最近の第1回目のマンション大規模修繕工事においては、外壁面が磁器タイルの建物が増えており洗浄に塩酸やフッ化アンモン等の劇薬物を含有している洗浄剤が使用されていることを知りました。現在の外壁塗装面の塗替えでは、水性塗料が一般的であり、鉄部もトルエン、キシレン等の含有していない塗料をお勧めしています。マンションの大規模修繕工事は、居住者の方々が住みながら工事でありますので、出来るだけ安全性の高い塗料、塗材をご提供して参りました。
しかしながら磁器タイル洗浄においては前記の通り、居住者の方々や作業者の安全を確保している材料で施工されていない。(塩酸は皮膚に触れと火傷する)このことを重要視し、安全性の高い洗浄剤の開発を開始して発売することが出来ました。
以下に各商品をご紹介致します。

1 アレスリフレTI(タイル用クリナー)
危険な塩酸・フッ化アンモン等の劇薬を含んでいないため、居住者・作業者の安全性を確保する洗浄剤であり、また優れた洗浄性(特にシーリング汚れ)を有しております。


2 アレスリフレAL(アルミ用クリナー)
有機酸(乳酸・クエン酸等)を主成分とした洗浄剤で環境に配慮しております。アルミ素材を痛めることなく洗浄できます。

3 アレスリフレF (フッソ被覆保護剤)
フッソ被膜を形成して素材を保護します。材料は水性系です。

4 アレスリフレST(ステンレス用クリナー)
有機酸(乳酸・クエン酸等)を主成分とした洗浄剤で環境に配慮しております。アルミ素材を痛めることなく洗浄できます。

5 アレスリフレBJ(強力拭き取りクリナー)
拭き取るだけで経年の油汚れや水垢を除去します。

6 アレスリフレGR(御影石用クリナー)
御影石に染み付いた汚れを除去します。強酸で石材表面を痛めるようなことはなく石材本来の風合いを取り戻します。

7 アレスリフレEF(エフロレッセンス除去剤)
頑固なエフロレッセンスを除去します。劇薬を含んでおらず安全性に優れております。

8 アレスリフレBL(中性錆び除去剤)
素材に付着・浸透した金属錆びを分解除去します。成分は中性であるので素材を痛めることがありません。

9 アレスリフレPR(シーリングプライマー除去剤)
シーリング打設時にはみだしたプライマーが経年で黄変した樹脂を除去します。




「遮熱性能を持つシート防水改修工法(ベストプルーフシャネツ防水)について」

             ロンシール工業株式会社 販売推進部営業推進グループ 参事 葛西 久 氏


1 屋上防水の動向
現在屋上防水に使用されている防水工法はアスファルト熱工法をはじめとして、塩ビ系樹脂系シート防水、合成ゴム系シート防水、塗膜防水工法その他諸々の防水工法が採用されております。最近5年間に屋上防水で実績がある防水工法は新築工事の現場ではやはり、歴史と実績があるアスファルト防水が48%近い大きな市場を占めているのも現実であります。しかしながら現在のリニューアル市場における改修工事の場合は最近5年間の実績を見ますと、塩ビ樹脂系シート防水による機械的固定(絶縁)工法が浸透しており、30%以上のシエアとなっております。マンションを初めとして、商業ビル、学校、病院その他あらゆる屋上の改修は近年、産業廃棄物処分の問題を含めて環境に対する配慮が必要となっております。その様な背景で改修には既存の防水を残す方法で新規防水層を塩ビシートで作り上げる機械的固定(絶縁)工法が広く受け入れられてきたことがシエアを伸ばしている大きな要因でありましょう。

2 既存屋上部分の諸問題
既存の屋上部分の防水は多岐にわたっており、劣化は日々進んでいるのが現実でありま  す。劣化の状況は押さえコンクリートのひび割れや、目地の浮き、目地部からの植物の繁茂などがあります。植物の繁茂では防水層に根が侵食し、漏水につながった例もあります。又ドレインの目詰まりによる屋上面の水没なども時々見られます。変わった事例では鳥の啄ばみによるゴム系シート防水の穴あきが見られ、漏水につながった事もあります。また、塩ビ樹脂系シート防水以外の露出防水(塗膜ゴム アスファルト系など)は耐候性の面から保護塗料が必ず必要であり定期的(5年に一回程度)塗り替えを行う必要があります。その点、塩ビ樹脂系シート防水は素材そのものが耐候性に優れているので保護塗料は不要であり塗り替えなどの煩わしさはありません。

3 機械的固定(絶縁)工法とは
  一昔前までは塩ビ樹脂系シート防水は下地に接着で固定する接着工法が主流でありまし  た。この基本工法は現在でも変わっておりませんが、リニューアルの時代に入り、環境  に配慮し、既存防水層を残したままで改修する機械的固定工法が市場を圧倒してきまし  た。この工法は下地と防水層を鋼板とビスで固定する乾式工法のため、接着工法のよう  に下地の乾燥を待つことがないので工期を短縮でき、施工費の低減を実現できます。工法にはディスク板を防水層の上から打ち付ける後付け工法(US工法)とディスク板を下地に先に付け、シートの上から電磁誘導加熱機を使用して施工する先付け工法(UD工法)の二つの方法があります。

4 ヒートアイランド現象緩和の為の行政の動き
  国土交通省は平成16年に「ヒートアイランド対策大網」に基づき、建築物の建築主等がヒートアイランド現象緩和の為の自主的な取り組みを行う設計ガイドラインを作成し、公表しました。その基本的な考え方の中で、建築物の設計に当たって配慮すべき事項として、使われる建築外装材料は「日射反射率の高い屋根材を選定することにより、建築物への入熱量を抑制すること」としております。さらに地方自治体 東京都も平成17年7月に「東京都ヒートアイランド対策ガイドライン」を公表し、全ての地域、建物に対し屋上の高反射率化を推奨しております。このように東京都は、屋根のクール対策(遮熱化)がヒートアイランド緩和になると積極推進しております。東京都は屋根の高反射率化による有効性を目的としての検証を平成16年8月に足立区の廃校屋上で遮熱塗料を使用した検証実験を実施し、屋上表面温度10〜15度の低下、室内温度においても日中で1.5度低下、夜間でも室内温度約1度低下する事を実証しました。この検証実験結果はヒートアイランド現象の緩和と室内の省エネに貢献するものとして建築学会でも発表になりました。

5 ベストプルーフシャネツ防水
ロンシール工業は塩ビ樹脂系シート防水材ベストプルーフ(1.5o厚 1230o幅)に遮熱の性能を付与した製品「ベストプルーフシャネツ」を発売しました。
遮熱とは、太陽光の中の特に赤外線を反射し、赤外線吸収による温度上昇を低減して、屋根に伝わる熱の量を少なくすることです。「遮熱性能」を示す場合は、太陽光の各波長の強度比率を換算・平均化した数値、日射反射率を使用します。
  日射反射率が高いことは赤外領域の光を多く反射することでありまして、屋根面の温度  上昇を抑制する性能があることを表わしております。ベストプルーフシャネツは、この  日射反射率がグレー色で58.5%、ホワイトグレーで69.5%と高く赤外線の反射性能に  優れていることが解かります。このことはベストプルーフシャネツと一般ルーフィング  を同時に促進劣化試験(メタルウエザー試験20年相当)を行った結果、表面状態に大きな差を見ることができます。
ベストプルーフシャネツは一般のルーフィングに比べ表面の亀裂が浅く、大幅に劣化が抑えられていることがわかります。この事は防水層の長寿命化と高耐久化を意味しており、改修サイクルを延長し、建物が寿命を全うするまでの改修回数を減らすことができます。 建物の寿命を50年と仮定した場合、ベストプルーフシャネツでの改修は全面改修を2回行うだけで済む計算になります。
このようにベストプルーフシャネツは従来の製品と比較し、長寿命、高耐久、夏場の屋根温度上昇緩和、室内冷房費の削減など優れた性能を付与した新世代の防水材といえます。

「電話回線を利用した集合住宅インターホンシステム(トリムオートロックシステム)について」

                         株式会社サンノーベル 代表取締役社長 舘 清通 氏


築10数年を経過したマンションでは、玄関にオートロックを設置しようと思っても各居室への配線が難しいがために、見送りになっているように考えられます。しかし凶悪事件の多発、盗難、悪戯を未然に防ぐ一つの手立てとして、外部侵入者を阻止する必要は必須と考えます。
そこで当社の通信ノウハウを駆使したシステムを考案しました。

※一般的なオートロックシステムとトリムの違いはオートロックが新設の場合
 

項目

  従来のオートロックシステム

  トリムオートロックシステム

配 管

施 工

共用部分から各居室への配管が必要

既設の電話回線を流用するため、配管工事不要

配 線

工 事

各居室へ配線、壁の貫通工事が必要

各居室へは立ち入り無し、共用部分のみの配線

打合せ

各入居者との工事打合せが必要

共用部のみのため、入居者との個別打合せは不要

工 事

期 間

各打ち合わせ、入居者の都合により長期に渡る

共用部のみなので短期間に施工可能

価値

配管配線だらけのマンションは美観を損ねます

共用部のみなので、美観を損ねません

その他

多大なコスト・膨大な手間がさけられません。

コストを抑えて、短期間で構築可能です。

 

※施工例:ワンルームマンション50室


オーナー様の声・・ 入居時の多くが固定電話に加入されておらず、導入に困りましたが、携
帯電話でも登録可能とのことで、各入居者の方からも、良い反響をいただいております。

※導入時の注意
通信を利用するためランニングコストがかかります、一日50件の外来者「マンション全体で」1ヶ月を30日として約1万円/月々(税別)です。
導入費用は、各建物の構造、設置場所によって異なるため、現地調査の上、見積致します。
(1戸当り導入費用は、概算で 3万〜5万程度)

私どもは、システムにお客様の環境を合わせるのではなく、お客様の環境に合ったシステムを創ります。それが私どもの提案の大原則です。


テーマ2:「管理組合と個人情報保護法」について

                 コーディネーター:マンション問題総合研究所 専務理事 久保 泰男 氏


平成17年4月から個人情報保護法が完全実施されました。平成17年は国勢調査の実施された年で、調査表の提出に多くの抵抗があって調査員が苦労したと報道されていました。法律の規制対象となる管理組合は少ないと思いますが、市民の意識は、自己の情報がどのように利用されるかに関心が高まった年でした。管理組合でも居住者名簿その他、個人情報に係わる資料を保管し、管理業務に利用されます。この法律は何を保護するのか情報の利用はどのように制限されるのか知っておくことは、管理組合に取っても重要なことと思われます。そこで、この度マンション問題に造詣が深い弁護士の小林美智子先生に、マンション管理組合にとって個人情報保護法はどのような係わり合いを持つのか解説をして頂きます。

                                  関東法律事務所 弁護士 小林 美智子 氏

1「個人情報の保護に関する法律の目的」 

法第1条では、高度情報通信社会の進展に伴い、個人情報の利用が拡大している現状から、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益の保護を目的とするとしている。

2「個人情報保護法の定義」(法第2条より)

個人情報・・・・・・・・・生存する個人に関する情報
個人情報データベース等・・個人情報を含む情報の集合物(体系的に構成したもの)
個人情報取り扱い業者・・・過去6ヶ月以内に、5,000以上の個人情報データベース等を保有し、事業の用に供する者
個人データ・・・・・・・・個人情報データベース等を構成する、個人情報
保有個人データ・・・・・・個人情報取り扱い業者が、開示、訂正等の権限を有する個人データ

3「具体的な個人情報とは」(特定の個人を識別できる情報)

  住所、氏名、部屋番号、電話、生年月日、年齢、性別、家族、収入、趣味、嗜好、性格、病歴、思想、宗教、映像、各種提出資料、他

4「個人情報を守るためには」

  個人情報の取り扱い事業者の範疇に入らない管理組合であっても、この法律の主旨に照らし、個人情報等を慎重に且つ適切に取り扱うことが必要です。
  具体的には、
@どのような事柄に注意すべきか。
A管理組合が、作成保管している文書類は、どのようなものがあるのか。
個人情報の記載された資料はかなりあります、名簿を始め提出された文章類、管理に必要
な基礎データ、滞納状況表、カメラ映像等さまざまです。

5「管理組合で個人情報を取得・利用する際の注意点」

  管理組合の理事長は、「善良なる管理者の注意義務」を負い個人情報の取り扱いに、十分に配慮が必要です。

@ 利用目的の特定〜情報取り扱いにあたり、その利用目的をできる限り限定する。
A 利用目的の通知〜特定された利用目的の達成に、必要な範囲を超えた取り扱いの禁止。
B データ内容の正確性〜利用目的達成に必要な範囲内での正確性、最新性の確保。
C 適切な取得〜偽りその他、不正な手段による取得の禁止。
D 監督責任〜個人データ安全管理のために従業員、委託先に対する、適切な監督。
E 安全管理〜個人データ安全管理のために、保管方法を定める。
F データ内容の閲覧〜情報の記載された帳票類の閲覧については、ルールを決める。
G 本人の情報開示〜保有個人データを、本人の求めに応じて開示、訂正、利用停止等、ただしあらゆる情報提供を強制することは出来ません。目的を説明し、理解を得た上で協力ねがう。
また、管理組合で、情報管理運営に当たり、細則の検討も必要である。

6「管理委託会社の個人情報取り扱いについての注意点」

 管理組合が、業務を委託する管理会社は、「個人情報取り扱い業者」に、該当するケースが多い。そのため4月からのデータ取り扱い管理体制の、整備や、教育が必要になります。 そこで、個人情報保護法 第15条〜36条にある「個人情報取り扱い者の義務」を履行してもらいます。
@ 利用目的の特定〜最小限の情報提供
A 安全管理〜情報の保管管理体制の確立、その他、管理組合が検討する内容を確認する。ただし、その規模に該当しない業者にも、同様の体制を要請し、管理組合と管理会社が、時代に沿った安全な個人情報の管理体制作りに協力する必要がある。
*ツール:標準管理規約、組合員名簿作成、運用、保管細則、防犯カメラ運用細則等。

開会

 欧米において、1960 年代から個人情報保護の必要性認識が高まり、1980年OECD(経済協力開発機構)において、個人データ保護に関するOECD 8原則が設けられた。日本もこの原則に準じて2003年個人情報保護法が制定され2005年4月1日より施行された。一部行政において、また管理会社や管理組合理事会においても過剰に反応されている向きもあり、関東法律事務所、小林美智子先生に講演をお願いしたものです。「個人情報保護法」の解釈、対応方法を知る前にその精神を理解することが大切であり、そのキーワードは、「優しく」であります。法律が先にあるのではなく、人間生活(人の暮らし)が先にあるということを認識しなければならないと思います。
実践セミナー終了後同会場にて、個別相談を約1時間に渡りお受けしました。スタッフ一同、今後もより良いセミナーを企画して行きたいと考えております。(事務局)

以上

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