第28回マンション管理組合実践セミナー開催報告 |
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5月21日に行われた第28回マンション管理組合実践セミナーの要約を報告いたします。 開会挨拶 NPO 埼管ネット会長 佐々木 一 テーマ1:「マンションの防犯対策」について コーディネーター:NPO 埼管ネット 監事 小島 次郎 氏 講師:浦和警察署 生活安全課 係長 警部補 猪 狩 拓 氏 講師:埼玉県警本部 生活安全部 生活安全企画課 防犯指導班 金田氏,鈴木氏 統計ではマンションと戸建住宅で、それぞれに占める犯罪割合はマンション35%、戸建65%と犯罪割合は少ないと言えます。また、全ての空き巣被害で戸建の被害が30%に対してマンションの被害は10%に留まっています。戸建と比較するとマンションの被害比率は低いのですが、マンションの犯罪はピッキングによる空き巣被害が多くを占めています。中でも外国人集団による犯罪が年々増えています。 マンション自治の観点からマンション内では、日ごろから知らない人でも積極的に声かけを行なうことにより犯罪は減少すると思います。それは犯罪者は人から声をかけられる事を最も嫌うため、声をかけることにより犯罪を思いとどまらせる抑止効果につながるからです。 マンション住戸内への侵入ルートは、玄関扉と窓等の開口部がありますが、泥棒が侵入を諦める時間は5分が目安になります。 破られ難い対策方法として @玄関扉の場合 ピッキングからの防犯対策としては、ガードプレート、サムターンカバー、補助錠の設置や防犯アラームを併設することが有効です。 扉のドアスコープから内部が確認できる道具等もあり留守か否かの確認も容易です。ドアスコープのあるお宅では内部からドアスコープ部分にカバーをかけておく様にした方が良いでしょう。 A窓等の開口部の場合 進入方法としては、窓ガラスの焼破りという方法で50%を占めます。 これは、バーナーでガラスを熱した上に水をかけ急激な収縮を部分的に発生させてガラスを破壊する方法です。 その他クレセント部分のみをドライバーでこじ破り進入する方法があります。網入りガラスは防犯上有効との一部誤認をされていますが、前記の場合は防犯上全く無力であると言えます。 破られ難い対策として右図の様なサッシュ枠への補助錠設置、防犯ガラス等の設置が有効です。 (平成18年4月20日 埼玉県防犯協会発行 地域安全ニュース抜粋) また、共用部へ監視カメラの設置を行なうことにより、防犯対策には有効な手段となります。特にエレベーター内等の死角になり易い場所への設置が重要です。 その他最近の犯罪速報として埼玉県警察本部より、ビデオ等を交え「振り込め詐欺」という新手の劇場型詐欺や「ひったくりの対策」について有意義なお話を頂きました。 また、マンション自治活動を実践しているコーディネーターより夜間の防犯対策として、共用部を明るくする事が犯罪行為を抑止するため有効であるお話を頂きました。 テーマ2:「マンションの耐震対策」について
まず過去の地震と建築基準法の変遷についてですが、建築基準法は1950年(昭和25)に制定されました。その後1964年の新潟地震と1968年に起きた十勝沖地震により1971年に建築基準法の耐震設計が改正になりました。大きな改正点は鉄筋コンクリート構造の柱内コンクリートがはじけないようにしっかり鉄筋で拘束し、地震による変形が起きても壊れにくい柱にしました。従来帯筋といわれる柱を巻いている鉄筋の間隔が30センチほどであったものを10センチほどに細かくしました。
1978年宮城沖地震が起き、1981年さらに建築基準法の耐震設計の考え方が改正になりました。従来は、震度5弱程度までの中地震では構造部材(柱・梁・床・耐震壁)は被害がほとんど起きないような設計をしますが、大地震に関しては規定がありませんでした。この改正で、震度6弱から6強の大地震が起きた場合、建物にひび割れや変形などの損害が生じても柱や梁が崩れ建物が全体崩壊や層崩壊することなく人命を確保できるように設計することとなりました。大地震が起きた場合は人命の確保を優先し、建物に被害があっても許容するという考え方です。
また、耐震壁ではない壁(非構造部材)に被害が出て補修に費用が掛かることから開口部に沿って耐震スリットを入れるよう指針で推奨しています。 この改正により阪神淡路大震災で神戸市中央区の被害状況を各改正年代の期間に建てられた建築に分けて調査した結果、倒壊・大破は旧建築基準法(1971年以前)が多く、軽微・無被害は旧建築基準法(改正)の1972年から1981年までと新耐震設計法が使われた1981年以降が多くなっています。
次に耐震診断の話に移ります。耐震診断には一次診断から三次診断に分けられます。一次診断は簡易診断で、延べ面積に対して十分な柱と壁の断面積がバランスよく配置されているかを判定します。二次診断は一般的な診断方法で、柱・壁のコンクリートの強度・鉄筋量から建物の耐震性を診断します。三次診断は骨組みを構成するすべての部材を考慮して詳細に耐震性を診断します。通常は二次診断までで耐震性が判断できます。 国土交通省の調べでは共同住宅の7%が耐震性不十分と推計しています。さらに旧耐震基準1981年以前に建築された共同住宅に限れば24%が耐震性不十分と推計しています。 耐震診断で耐震性が不足していると診断された場合、耐震補強の方法として以下の方法があります。 @ 耐震壁の増設 A ブレースの増設 B 外付けブレース補強 C 柱等のFRP巻補強・鋼板巻補強 D 免震補強 E 制震(振)補強 DとEに関しては現実的には費用が掛かりすぎるためマンションでの採用は難しいと思われます。 @からCの方法に関しては学校等の公共建築で行われています。1階が駐車場等で使用されピロティ形式になっている場合は補強が可能と思われます。しかし、共同住宅の場合はこれらの方法で補強することは構造的に困難であり、居住性も失われ、それが各住戸で不平等になる場合もあります。耐震診断をしても補強の方法が物理的に困難であり、補強工事が区分所有者の合意を取りにくい場合が考えられます。耐震診断をする前に『耐震性が不足していたらどうするか』というシナリオまで考えてから診断することをお勧めします。 マンション管理センターは「ご自分のマンションの耐震性を確認したいマンション管理組合の皆様へ」http://www.mankan.or.jp/051202kenchiku.pdfとして耐震診断及び改修にいたるフローチャートを発表しています。 これらを参考に耐震診断の実施決定のための要素をまとめて見ますと以下の項目があげられます @ 建設の時期・耐震設計基準 A 構造計算書の有無 B 建物の形状(ピロティ・複雑な平面や立面) C 建物の工法(PC工法・壁式工法・超高層) D 診断の費用 E 補強工事の可能性 これらを総合的に判断するには建築士のアドバイスが必要と思われます。 耐震対策には建物本体だけではなく家具の転倒や設備機器の転倒・脱落対策があります。家具転倒と避難経路に関しては鞄立東日本ソリューションズが「室内危険度診断システム」をホームページ上で公開しています。http://www.hitachi-to.co.jp/products/sindan/index.html また、電気温水器の固定やエレベーターの地震制御の確認をすることも大切です。大規模修繕時に玄関ドアを建物変形対応仕様に変更することも必要です。 地震が起きてからどのように対応するかは「災害時の対応マニュアル」を作成し周知しておくことが大切です。ある調査ではこのマニュアルを作成している管理組合は平成15年で12.3%となっています。まずはチラシを作る感覚で作成してはいかがでしょうか。そのなかに必ず『災害用伝言ダイヤル171』を明記しておいてください。地震保険の加入についても埼玉県は保険料が引き下げになりますので是非ご検討ください。 Q&A(参加者からの質問を抜粋) Q:神戸市中央区の被害建物調査で旧耐震基準(改正)の1972年から1981年に建てられた建物の被害状況を比べてみると新耐震1982年以降に建てられた建物と同じような被害になっていますがどうしてでしょうか。 A:1971年に改正された内容の主なものは帯筋の間隔を細かくしたことです。結局このことが建物の崩壊を食い止めた大きな要因になっていると思われます。ただしこの調査は神戸市中央区の狭い範囲であり全体的にいえることかどうかはわかりません。 Q:昨今のように耐震診断を薦めるようになったのは耐震偽装が発覚し社会問題になったからではないのでしょうか。それ以前に旧耐震基準の元での耐震強度不足はあったわけでそれまでの行政の責任はないのでしょうか。 A:1977年に既存建物の耐震性に関し耐震診断・耐震改修の設計指針が出ています。公共建築はこれに基づき計画的に診断・改修を行ってきました。民間の建築は建築基準法が改正されてもこれにあてはまるように建物を改修しなければならないとはしていません。既存不適格建物とされますが、大規模改修や建て替えるときに現行の基準法に当てはめればよいわけです。 Q:素人でもわかる構造計算書のみかたを教えてください。 A:構造計算をする場合、建物の総重量が基準になります。総重量とは建物自体の重さと建物に乗る人や物さらには雪の重さを足したものです。それを延べ面積で割った数値が1.3t/u程度であれば妥当と思われます。多少の差はありますが1.0t/uを下回ることは共同住宅の場合まずありません。これは計算書の最初に出てくる概要書に載っているはずです。チェックしてみてください。それ以降は専門家に依頼してください。
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